地球がくれた伝説

 とってめかしいリンパの流れに、
ストップウォッチは疾走する。負け
ないようにCD―Rを回し投げ続け
たら、白樺の木を切り倒す結果にな
った。カミナリから我が家を守り続
けていた白樺の木。
「恩を仇で返す」小さく呟いてガッ
ツ。やかんが叫び踊るたびに冷水を
かけて黙らせる毎日、ジューッとい
う音に和んでいた白樺は口惜しそう
に根っこが動いている。「もう十
分・・・」そんな哀愁を漂わせ、や
がて切り株ごとくねくね旅立ってい
った。
 
想像以上にCD―Rはやんちゃで
オランダまで行って、アムステルダ
ムを占拠しようとしたらしい。場所
を間違えやがった。同じオレンジ色
でもやや明るいことを知らずに、ス
イッチ押せば全ての物質が吸い込ま
れてゆく。異種格闘技、団体戦はC
D―Rには無理! 
せいぜいスカートの中を焼いて帰ろ
うとするのがオチだけど、せめて浮
世絵から電気くらわっちまいな、と
声を失った人魚姫は言ってみたいの
だった。
 
王子様は名前の呼ばれ方のヴァリ
エイションに苛立って一覧表にして
みた。「黙らせるにはこれが一番」と
蛙らしい発想だ。ちなみに王子様は
「人間は皆、蛙だ」が口癖で、水の
音でも聴かせてやれとばかりに噴水
ダイブ。しかしスピード上げた婆さ
んとぶつかった結果、婆さんやや優
勢になりストップウォッチは9秒ジ
ャスト。そのカリスマ性に人々はジ
クジク右手を上げ、チョビ髭は自分
の絵が下手なことに気づいた。
 
「絵なんてものは心で描くものだ」
「心で?」
父さん魚は子魚に言う。
「父さんも昔、絵のためにチョビ髭
憧れてしまった」
そんな言葉を耳に残し、自画像を描
こうと鏡の前でため息つく薄っぺ
らな毎日・・・

 今日も静かにマリンスノーが深海
に舞っている。


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