バジルよ、元気で

ふらふら歩いてて
崖っぷちにたどり着いていたらしい
そうと知らず
良い香りに気をとられていた
足元にバジルが植わってた
「こんなところにあるわけない!!」

バジルをそっと持ち帰る
植木鉢で育てる
水をやって日に当てる
フンワリと良い香り
毎日の楽しみ

ふと気がつくと
子供が見ていた
バジルの香りに引き寄せられ

見ていた
見ていた
見ている
見ている

植木鉢ごと差し出した
「あたしの好きな花じゃない」
受け取ってから言う
「もっと良い子にあげればよかった!」
私は駆け出した

もう好きにしろ
バジルなんてなかった
一晩バジルの夢を見る
枯れてくバジル
千切れるバジル
うなされて目を覚ます

ポストがコトンと鳴った
中には紙切れ一枚
「いいにおいです」

私は泣いた
わーんと泣いた
ありがとバジル
短い間だったけど
バジル
崖から落ちなかったのは
バジル
君は風の方角を知っていたのかい
バジル
もう戻ってくるんじゃない
バジル
香りを放ちすぎるなよ
バジル
太陽は自分で探せ



君は風の方角を知っていたのかい


二千年目のすれ違い


ロゼッタ
ごめんよ、約束を破る

こんなに風が強い日は
恵まれた二人のセレモニー

出会う前から恋になる
噂に胸をときめかせていた

気の遠くなるよな
熱に煽られ

初めて出会った君は
不思議な表情で魅了した

揺らぐ足元を
確認しながら

だから知りたくなる
君の全て

方位磁石を取り出した
北も南もないけれど

寝ても醒めても君を思い
理解しようとした

なんとなく立ち止まる
この辺でいいか、と

君さえいれば
たとえ全てを失っても!

目を閉じて深呼吸を一つ
神聖な空気に触れるよう

ああ、なのに
「これ以上、さぐっちゃダメ」
あともう少しだったのに

蜃気楼が見守る
僕たちのドラマ

我に返る
それは君がくれた予防線なのだ

ポケットから、そっと手を出す
ズッシリとした重みを感じながら

「ただ側にいて」

ああ、ロゼッタ
僕にはそれはできない

砂塵に巻かれ
涙を搾る

本当に君を愛していたんだろうか
君を愛する僕を演じたのだろうか

それならば
いっそのこと
見えない世界へ


すまない

シュー 

ドスンッ!
 


熱風がシャワーを作り
君の上に降り注いだ

「あたしは、あたしなのに・・・」

虚ろな言葉が
砂の下でかすかに響いていた

ほどなく訪れる
足音を待ちながら


inserted by FC2 system